こんにちは。上尾市の歯医者 とも歯科矯正歯科クリニック院長の中川です。
今回も日々診療している中でいただいた、患者さまからの質問にお答えしていきたいと思います。
30代女性からの質問です。
『先生、歯磨きって食後すぐにしたほうがいいの?』というものです。
これもよく聞かれる質問です。
『食事してすぐは磨かない方がいいと聞いたことがあって』
とおっしゃられる方もいらっしゃいます。
確かに「食後歯をすぐ磨くと歯の表面が傷つく」という内容が示されている論文も存在します。
ただこれはいくつか、皆さんのお口の中の状況とは違う条件の部分があります。
具体的に申し上げますと、この論文は歯の「象牙質」の酸に対する抵抗性を調べた実験についての論文です。
この実験ではコーラやサイダーなどの炭酸飲料に歯の「象牙質」の破片をつけると「象牙質」が傷つき弱くなることが示されています。
まず、この実験で用いる炭酸飲料は酸性でpH5程度です。象牙質にダメージが出やすいpHは5.5以下と言われていますので、炭酸飲料を飲むと歯の表面が溶けて、傷つきやすくなるというものです。
ちなみにpHは低ければ低いほど、酸性度が高く、歯へのダメージは現れやすくなります。
この「象牙質」と炭酸飲料の実験ではさらに炭酸飲料でダメージを受けた「象牙質」の欠片を30分以上口に含んでいると、唾液の作用で「象牙質」が再び強くなることが示されています。
唾液には緩衝作用があり、酸を中和してpHを中性に近づけてくれる作用があるのです。
この実験の結果から『食後30分ほど経ってから歯磨きしたほうがいい』と言われる様になったようです。
しかし、この実験が示しているのはあくまでも『炭酸飲料を飲んだ直後に象牙質を歯ブラシで磨くと象牙質を痛めやすい』ということです。
この内容の論文があることは確かですが、実際のみなさんのお口の中はこの実験室で行った環境とは大きく異なります。
その根拠としてまず、今回の実験では「象牙質」の話でしたが、みなさんの歯の構造において「象牙質」の周囲に「象牙質」よりはるかに頑丈で強い「エナメル質」があり、「象牙質」を保護しています。
また炭酸飲料のような酸性の強い食品ばかり召し上がるわけではないと思います。
こうしたことを総合的に考えて、食後にすぐ歯を磨くことで歯を傷つけてしまうというリスクは少ないのではないかと思います。
すぐ磨いたらダメというわけではないということですね。
ではいつ磨けばいいのか?
私の答えとしては『食後すぐが望ましいです。でもあまり気にしすぎちゃうと食事の余韻も何もないですから、磨ける時に磨いてください。』とお答えしています。
食後すぐに歯を磨くことで、口の中の汚れを落とし、虫歯や歯周病菌が繁殖しにくい環境を作ることができるので、可能であれば食後早めに磨いた方がメリットはある気がします。
磨ける時に磨けばOKですが、時間を気にするあまり歯磨きするタイミングを失ってしまっては本末転倒なので、気をつけていただけたらと思います。